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落ち葉の栞
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堀江敏幸『正弦曲線』に、
ベンチで読書をしていたところ、雨に合い
慌てて落ち葉を栞にした、というような話があった。

落ち葉を栞にするひとといったら、母を思った。
彼女はいつもペーパーバックを読んでいる。
栞は何かのメモ用紙のこともあるけれど
落ち葉のこともある。

10代の頃、初めて外国に行ったときに、
お土産は何がいい?と聞くと
「おかあさんは、落ち葉みたいなものがいいわ」
と答えた。

わたしはそのときお世話になった家の前の
メープルの葉をひと月くらいの間、大切に本に挟んで
持ち帰ったのだ。

落ち葉は、記憶よりはずっと脆いもののはずだけれど、
本棚に並ぶ古い本を見ていると、それが今も消失しないで
そっと、どこかに挟まっているかもしれない、と思う。
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by favoriteworks | 2009-12-01 18:24 | memory
鬼灯(ほおずき)の匂い
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昔からほおずきが好きなのだ。
この色。食べられないけれど美しい、その実の色。
からすうりもそう、見つけると目が離せなくなる。

ほおずきを、紙風船のようにふくらまして、
音を鳴らすことができるのは母だけだった。
大人になれば、できると思っていたのに
いまだ鳴らすことができない。

第一、せっかちなひとには、その実を壊さずに揉んで
種だけ取り除いて風船にすることじたい、難しいのだ。

てのひらにそっと包んで、ほおずきの香りを確かめる。
夏休みの庭の匂い。
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by favoriteworks | 2009-08-15 12:38 | memory
ちらし寿司とお箸
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お正月になると、酒の肴やおせち料理ばかりで、
意外におなかが空いてしまう子供たちのために、
母が作った、ちらし寿司。
その習慣を受け継いでいる。

ふたり暮らしの家のおせち料理が、
年を追うごとに簡略化されていくなかで、
これと黒豆くらいはいつまでもよろこばれ、
生き残ると思っている。

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姉さん人形をかたどる爪楊枝がついている和紙の箸入れは、
伊豆の山姥、大好きな伯母の手によるもの。

いま、こうして生きている、細胞のひとつひとつに宿っている、
温かな記憶に感謝している。
それらはいつも、新しい時へ向かう、力となってくれる。
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by favoriteworks | 2008-12-31 19:35 | memory
家の庭-2

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実際より広く写るのは
庭の記憶を撮るからかもしれない

井戸があった
柿の木があった
犬がいた
垣根があって木戸があって
祖父が焚き火をしていた
別の人が住んだこともあった
もうひとりの祖父と祖母が
石灯籠やつくばいを運んできた
今は母が手入れする
その庭

わたしはいつも、玄関ではなく
庭から家に帰る
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by favoriteworks | 2008-10-15 23:35 | memory
懐かしい町
20年近く前の記憶をたよりに歩く。
この界隈もすっかり変わってしまって、
心ぼそくなりかけたころ、奇跡的に
懐かしい「羽衣」の前に出る。
地図がなくても辿り着けて、うれしい。
こういう瞬間がすき、と思う。

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よく、冷やし中華そばを食べに
「羽衣」に行った。
おそばを食べて外に出ると、また
懐かしい、ひとの姿を見つけた。

それは靴の修理をするひと。

よく、ヒールを傷めていたから
道端でパラソルをひろげて商売をしている
おじさんに、修理してもらっていた。

座布団をのせた椅子に腰かけて、間抜けな裸足で
職人らしい手先や、ありとあらゆるかたちのゴムの踵
(パーツがなかったことは、一度もなかった)や
鋲の入った工具箱を眺めていた。

銀座に靴屋はたくさんあるけれど、
彼の仕事は一番早くて丁寧に思えた。

おじさんは、昔と同じ職人さんかどうか
わからないけれど、この再会をひとり、よろこんだ。

変わらないものなんて、ないけれど
変わりゆく中にも変わらず在り続けるものを
探してしまう。
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by favoriteworks | 2008-08-17 12:01 | memory
家の庭
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庭の、気がつかなかったところに
小道を見つけたおどろき。

家の庭が宇宙のすべてで
どこにだって続いていた頃に
タイムトリップ!
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by favoriteworks | 2008-08-17 11:51 | memory
pillow soap
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長いこと旅をしていなくても
枕元に気にいった石鹸を置くと
外国の夜の夢をみる

窓の外をムースがひっそりと歩く

騎馬警官の馬の蹄の音が
アスファルトの上を遠ざかる

それはいつも記憶のどこかに
微かに残っている
夜の動物のやさしい気配
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by favoriteworks | 2005-12-23 23:04 | memory
玉蜀黍の記憶
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その色が楽しみで、皮ごと茹でては見入ってしまう
この色や甘さはどこから来るのだろうと思う。

昔、乾燥した玉蜀黍でできた宮殿に行ったことがある。
玉蜀黍畑に消えた野球選手の映画を観るずっと前のこと。
わたしはそこで、確か、玉蜀黍でできたパイプを買ったのだ。

それが果たして本当のことだったのか、今では不確かだけれど
その記憶はなんだかとても頼もしい。
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by favoriteworks | 2004-08-03 16:53 | memory
the impresseive year
その年の香り
その年の音楽

その香りを買った時
瞬間保存された言葉の断片

"for him or for her?"
"for me."

印象的な年のことは
呆れるほど細かく記憶している。

その年は相変わらず
懐かしい家みたいにそこにあるので
時々そっと訪れる。

感傷にひたるのではなく
気持を強く持つために。
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by favoriteworks | 2004-07-18 11:05 | memory
嬉しかったこと
a0024222_17311.jpg確かにもう二度と
同じことは起こらないけれど

嬉しかった、愉しかった出来事は
時々取り出して磨いたり
大事にもう一度ゆっくり眺めたりできる
美しい石みたいなもの

記憶にある限り
何かが起こっても決して失われない
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by favoriteworks | 2004-06-27 17:32 | memory