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ガラスのテーブルで
引越しをして食卓が
アメリカ松からガラスになった
冷たい
硬質な音が響く
けれどガラスは
透明な光のなかに
いろいろな色があることを
教えてくれた

日に日に濃くなる
木々の色を映し
気まぐれのように
床に虹を落とすのを
頬杖をついて見ている

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by favoriteworks | 2008-04-14 17:41 | others
山姥の記憶
わたしは東京生まれ、東京育ちなので
いわゆる田舎というものがありません。

でも、子供のころの夏休みや春休み、
よく連れて行ってもらったのが伊豆でした。
そこには伊豆の山姥がいました。

伊豆の山姥とは、母の年の離れた姉で
わたしにとっての伯母です。
いつも毛筆でくれる外国語の書体のような手紙の
最後に「伊豆の山姥」と書いてあるのだけ
子供には、読むことができたのです。

伯母はずっと職業婦人で、美食家で、話が面白く、
わたしのことをとてもかわいがってくれたひとでした。
伯母の部屋には日本中の民芸品、焚きしめられた
お香の淡い香り、能面……。
それは、子供の頃のわたしの田舎の記憶となりました。

90を過ぎて、いまは施設にいます。
ところどころ記憶が消失して、過去と現在がときどき
混同して、時間の流れかたもずいぶん変わってしまいました。

わたしをわたしと認識してくれることも難しい様子になってしまったころ
思いたって、数ヶ月をかけて、ある計画を実行しました。
伯母にもらった着物を着て、見せにゆくということです。
そうしたら、いま、ここにいる姪のわたしと、つながるかも……。

絵柄や染め色、織の話を少しだけ聞くことができました。
でも、それは姪のわたしに話してくれたのとは、微かに違った感じがしました。

今日は面会に行って、うれしいことがありました。
なにかとても通じる瞬間があったのです。
それは、ほとんど見逃してしまいそうな、微妙な表情だったかもしれません。
雑誌を見ながらニッコリ笑って、わたしの呼び名も思い出してくれたので、
うれしかったのです。

それは遠く離れていた惑星が、また近くに巡ってくるように。

伯母はいま、伊豆で一緒に仕事をしていた人たちを、
施設内でよく見かけるそうです。
まだ季節も巡らない入ったばかりの施設なのに、
お節句の頃には、この窓から一面の鯉のぼりが見えるのよ
と教えてくれました。それは楽しそうに。

伯母と別れて少し泣きました。

伯母がいつも、今も、ずっと、寂しくなさそうなことに。
しあわせに老いていくことに。
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by favoriteworks | 2008-04-09 23:30 | 想う
マイ・ブルーベリー・ナイツ
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ウォン・カーウァイ初の英語作品。

『花様年華』のエピソードのひとつを
この映画に仕立ててあるのだそう。

夜の列車の轟音と照明。
カフェでの突然の乱闘シーン。
大きな時計。警官。美しきギャンブラー。
本当はキライな食べものを
俳優においしく頬張らせる演出。
夢うつつなフィルムワーク。
そして
スイートでせつないモノローグ。
が、とてもウォン・カーウァイ。
魅力的な監督。

素直になるのに必要なものは
時間と距離かもしれない。
遠すぎたり、遅すぎたりして、
取り返しがつかなくなることもあるけれど。
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by favoriteworks | 2008-04-03 19:43 | 観る、読む
HENRY DARGER'S ROOM
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シカゴ市内、ウェブスター通り851番地のアパートで
人生の後半の40年を過ごした老人が去った後でみつかった
15巻15,145ページにわたる手製の本『非現実の王国で』。

大量の雑誌の切り抜き(ほとんど少女の写真)や
40年間ほとんどものを捨てることがなく
集積するがままになっていたという部屋のことはさておき、
そのスクラップ、コラージュ、幻想の世界に惹かれてしまう。

今では「20世紀アメリカが生んだ最も重要なアーティスト」と
呼ばれることもあるヘンリー・ダーガーは、
でも、その呼び名をダーガーなのかダージャーなのかも
正確にはわかっていないようだ。ほとんど知り合いがいないから。

現実から逃亡し、ひたすら物語世界に生きる孤独……。
ただ、本人にとっては孤独な人生ではなかったかもしれない。

『非現実の王国で』はNYのフォークアート美術館に所蔵されている。
わたしの、大好きな美術館のひとつ。

『HENRY DARGER'S ROOM  851 WEBSTER』
小出由紀子 都築響一編
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by favoriteworks | 2008-04-03 19:39 | 観る、読む