大切なひとが、突然消えてしまったら。
そういう事態をどこかで意識したり、覚悟したりすれば
ともに過ごす何気ない時間を、かけがえのないものとして
大切にいとおしむことになる。
年を重ねるほど、意識や覚悟ができていくのかもしれない。
村上春樹の小説の中では、誰かが突然失踪したり
何かが忽然と消失してしまうことがよくある。
短編集『めくらやなぎと眠る女』の中でも
いろいろなものが失われている。
昔読んだ物語は忘れかかっていて、初めて読むように
楽しめた。今のほうが、共感できているかもしれない。
おわりに、柴田元幸氏への謝辞がありそうな気がしたのは
翻訳されたアメリカ小説みたいだったからだ。
ニューヨーカーはこの短編集を、どんなふうに読むのだろう。
『めくらやなぎと眠る女』村上春樹